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≪スペシャルトーク「ボクらの喜劇」≫

●お三方はプライベートでも交流があるのでしょうか。

福田
ないですね~。
佐藤
一切ない。
ムロ
会う時は意味がある時ですね。
福田
ないですね。全くない。僕もムロくんを誘う時は重大なお願いがある時だし。
二朗さんとは1回だけ寿司屋でご飯食べましたけど、その時は「舞台をやってもらえないですか?」ってお願いしに行った時だし。
佐藤
30分で終わりましたよ。僕は福田と知り合って10年以上になりますけど、福田とサシでご飯食べに行ったのはその1回だけ。
ムロ
それで思い出したけど、『ヨシヒコ』の1が終わって2の時かな?珍しく二朗さんと2人きりになって、二朗さんが「ムロさ~正直『大洗』の時は何も思ってなかった」と。「無関心まではいかなかったけど共演者として何も思ってなかった。でも『ヨシヒコ』のシリーズ1をやっててちょっと楽しいなと思って。その後OAを見たら、嬉しさと共に恐怖を感じるような存在になってくれたんだな」って言ってくれたのをすっごい覚えてます。
福田
それは嬉しい言葉だよね!
ムロ
逆に『大洗』の時は僕も何も分からなくて、何か爪痕残そうと思って空回りしちゃってた。面白くない空回りだったと思います。佐藤二朗さん、安田顕さんというすごい人たちに何か一目置かれたい、もしくは何か結果を残したいと思って。この人たちと肩を並べているんだと思い過ぎていたんです。(主演の)山田孝之と一緒に何かを作り上げるんだっていう想いもあったけど、空回りして何もできなかったっていうあの経験が…。これは何度も言ってますが、宣伝のために作られた『大洗』のスピンオフがあったんですね。あれからすべてが始まった気がするんです。
佐藤
『ハモる』だろ。
ムロ
はい。皆で本気でふざけて福田さんの本当の思いつきを形にしてパンパン撮っていくっていうあの作業で、『ヨシヒコ』の原型中の原型ができたなと思っています。

●『新解釈・幕末伝』のテーマは?

佐藤
福田が解釈して福田が信じて疑わない「坂本龍馬ってこんな人だったんだ」っていうのが、ほとんどイコールムロツヨシだったんだよね。
ムロ
それがまずおかしいんですけどね。「まあまあまあ」って言う人? 台詞にもなっていますけど、「まあまあまあ」はどっちにも使いますからね。険悪な時も「まあまあまあ」、いい時も「まあまあまあ、このままいきましょう!このまま!」って(笑)。
佐藤
ニュアンスが変わるだけね。
ムロ
その「まあまあまあ」をよく言ってるみたいです、私が。
福田
だって売れてない頃、(ムロは)自分が出てない芝居の打ち上げに行ける人なんですよ。
ムロ
そうそう、行ってましたね。
福田
「ムロツヨシです!カタカナ5文字のムロツヨシです!」って言える人。やばくないですか?!そのコミュ力!
ムロ
まあまあ、そうですね(笑)。
福田
僕は坂本龍馬ってコミュ力だけで生きていた人間だと思っているので。
佐藤
福田の解釈ではね。
ムロ
それだと僕が売れた理由は、コミュニケーション能力だけみたいになっちゃうから(笑)。芝居もちゃんとやってますからね。まあ、でもそういうイメージということです。
福田
(笑)。今回の二朗さんがやった西郷さんに関しては、今までとは全然違う解釈ですからね。
ムロ
でも僕、二朗さんにこういう一面はあると思います。本当はそこまで…(ふざけてない人)。
佐藤
そうね~。でも実際確かに西郷隆盛って、あの顔の写真も本当かどうか分からない人じゃないですか。今回は『新解釈』でもあるし、わりと自由にやれるかなと思ってやりましたけどね。
ムロ
でも今日3人で久々に会ってお話してみると、まさかのこの時代に必要であるのではないかと思える作品になっているのがびっくりで。
福田
本当にそうだよね。
ムロ
「まあまあまあ」っておちゃらけている人がいて、寡黙に真面目にいろんなことを背負ってなんとか日本を変えないといけないと思ってる人がいて。おちゃらけていいとこ取りをしつつ、「悪いけどここの部分は必要ですよね」とか言いながら(日本の夜明けに)繋げていったという解釈は、今のこの時代においてすごいことだなと思っています。
佐藤
皆それぞれが正義だと思ってるじゃないですか。絶対自分たちに正義があるし、理があるから、じゃあそれをどうまとめるのかという時に、ちょっと自分を一旦置いておいて、「まあまあまあ」とコミュ力だけで乗り切る人がいたら?って考えると…もしかしたら龍馬って本当にこういう人だったのかもしれないと思う。彼がすべてをまとめたんじゃないかと。
ムロ
争いなくね。
佐藤
今もこういう人がいたらいいと思う。
福田
本当にそうですよね。いたらいいんですよ!
ムロ
今っておちゃらけられない。おちゃらけることを認めてくれない。時代もそうですけど、いつかそれを一周二周回ってバカやピエロみたいな人が必要かもしれないって思えるような作品になっている気がしますね。

●[喜劇]に対してのお三方の想いをお聞かせください。

佐藤
今回僕はいつもの福田色は封印しましたけど、ずっとこの2人と一緒にいて思うのは、アホみたいに笑いを真剣にやってるなということ。僕もそうですけどね。ただ今回の映画に関しては、笑いを真剣にやっていることは画面に必ず出ていると思う。泣きたくなるくらい真剣に笑いをやっているなと。分かりやすく言うと、ムロツヨシと賀来賢人の汗だったり。それを全体を通してすごく感じましたね。当たり前ですけど人を笑わすのってものすごく難しいから、それこそ鉄をも溶かすような熱量がなきゃできないことなんです。その熱量がこの作品にはちゃんと出ているなと思いました。
ムロ
その熱量を隠すことが一番かっこいいとは思うんですが、今回は隠しきれなかったシーンがたくさんありますね。それこそ汗ですね(笑)。
福田
今回は初めてそこを隠さずに言っていこうという覚悟でやりました。今までは絶対言わなかった!「だいぶ適当にやってま~す」っていうのが僕のカラーでしたから。分かってるんですよ、適当にやってることを許せないって人がいるのも。でもいわゆるコメディ、喜劇をやる人間に「実はこんな苦労してます」は絶対に言っちゃいけないし。何の得もないと僕は思ってる。
佐藤
笑いにつながらないからね。
福田
「この笑いってこんなにこだわられてやられてるんだ~」は何も必要がないんです。でも今回はいわゆる僕がずっとやってきたギャグコメディでは全くない。一生懸命何かをやってきたやつが結果的に一番面白いし、結果的に笑えるという喜劇だから、「ちゃんと汗をかいてがんばりました」は絶対に言っていきたいなと思っています。これは今まで福田組がひた隠しにしてきたことです。小学生の時代から『勇者ヨシヒコ』を見てきた方たちを裏切るようですが、(佐藤演じる)仏のセリフは全部決まっているし、わざと忘れているし、わざと噛んでいる。これは言ってほしくなかったかもしれないし、すべて仏のアドリブだと思いたかったかもしれないけど、福田組はそういう笑いの作り方をずっとしてきました。だからこそ「今回の作品は、今までとは違う取り組み方をしてますよ」ということをはっきり言っていこうと思っています。
佐藤
僕が【薩長同盟】で嬉しかった瞬間は、ムロとわりと打ち合わせができたということ。
   俺が一方的に言ってただけかもしれないけど。
ムロ
そんなことないです。
佐藤
笑いに関しては今回俺は引くというか、静かな形で笑いに貢献したかったから、明らかに今までみたいなことではないじゃない。今思えば仏もそうだったんですが、すごく泣くじゃないですか。大人が泣くって面白いんだけど、今回は龍馬が泣くところがあって。ムロも最初は試しでやってみてたんですが、ムロの面白さは伝わるんだけど坂本龍馬の面白さが伝わらないなって思うところがテストで1回あったんですよ。
ムロ
うんうん。ありました。
佐藤
言おうかな~と思ったけど、俺は何も言わなかった。なんだけど、ムロは本番で自分から本当に泣いてるみたいな感じの芝居にしてきたの。俺はその時に「本番の時の方がいいと思うよ」と言ったら、「そうですよね。ありがとうございます」と。そんな会話ができてよかった。パスを出し合い、プレゼンを互いにしつつ、みんなで1つのシーンを高めあうことができた気がして嬉しかったです。俺は今回、むっつりとしたキャラでしか(笑いに)協力できない。ムロが全部ひとりでやるしかないヒイついた状況の中で、「今の面白かったと思うよ」と俺が言って、「僕もそう思います。ありがとうございます」みたいな会話ができるのって結構いいな~!と思いました。
ムロ
何度か言ってくださいましたよね。覚えてます。
福田
今までの僕だったら【薩長同盟】でさえ、「段取りなしで1日で撮ります」みたいなことを言ってたと思う。
佐藤
そうね。
福田
でもあれを見たら"そんなことおこがましくて言えない!"と思って。あんなヒリヒリ感を見せられたら!